漫才の書き起こし/アンタッチャブル

漫才の大会「M-1グランプリ2004年」優勝者アンタッチャブルさんの2本目のネタの書き起こし。
これを読めば日本一を取った漫才の作り方がわかります。

書き起こしの読み方


これからご覧いただくアンタッチャブルさんの漫才ネタの書き起こしを読む際に、必要な情報です。
  • ネタの展開が分かりやすいよう全体を「起承転結」で区切っています。
  • ( )内は、一方がセリフを言っている最中に、もう一方(相方)が割り込むセリフです。
  • (※ )内は、補足の説明です。
  • ボケ担当・山崎弘也(※父親役)を「山」と表記しています。
  • ツッコミ担当・柴田英嗣(※息子役)を「柴」と表記しています。
  • 緑色の文字はボケの解説です。
  • 赤色の文字はボケとツッコミの仕組みです。
  • 映像からネタを書き起こしましたが、音声が聞き取りづらかったところや、二人の会話が重なるところで台詞を省略・調整しているところがあります。※場合によっては間違っているかもしれません。

1. 起


山「ど~も~、おめでとぉ!」
柴「いや~、しかしこんなところに出させていただいて」

コンビで(明るく振る舞いながら)舞台に登場

山「せ~のっ!子供のしつけって大変だよねっ!」
柴「いや、聞いてない聞いてない。お前。そんなスタートってあるかしらね」
山「でも、大変だよ。親がちゃんとしないといけないんだからさ(おうおうおう)。例えばね、自分の息子がね(うん)、デパートかなんかで万引きしちゃうんだよね。
そこに親が呼び出されて、ちゃんと叱れるか叱れないかで子供の人生変わってくるからね」
柴「いやね、そうかもしれないけど」

相方(&観客)に対してネタのテーマを突然切り出すという「なんの前置きもなしに突然話を切り出すボケ」を行う
流れの中で突然すぎる発言を行うことで意外性を作るボケを行い、そこに(ネタの序盤なので盛り上がりを抑えるために言い方を強めない)戸惑うツッコミを入れる

山「だから、今日は親がビシッと言うとこ、やりたいな~」
柴「いや、『やりたいな~』じゃなくて。そんな安直な発想で(いっちゃお!いっちゃお!いっちゃお!)いやいや、聞け聞け。俺の話を」
山「(※左右の指で鼻の穴をふさぎながら)あ~~~っ!」
柴「(※左右の手で両耳の穴をふさぎながら)『あ~っ!』はこうだよっ!『あ~っ』はこうだよっ!お前、窒息したいのか?もしくはエアーで太りたいのか?」

相方に対して一緒にコントをするよう提案。相方から拒否されると、人の話に対して両耳の穴をふさぎながら「あ~っ!」と声を出して聞かないようにする「あるあるな行動」を、「両方の鼻の穴をふさぐ」という穴は穴でもふさぐ穴が間違っている「あるあるな行動を部分的に間違えるボケ」を行う
合ってる部分(穴をふさぐ)と間違っている部分(ふさぐ穴の場所)の両方を含んだ行動をボケとして行い、それを観客に気付かせる訂正的なツッコミを入れる

山「いや、とにかくやりたいの。(※柴田を指し)だから息子ね、(※自分を指し)親ね。
はい、よ~い、ハイッ!」
柴「(※小声で)なんだ、『ハイッ!』って…」

コントをするための二人の役割を相方に提案し、(観客に対して)コントに入る合図をする。

2. 承


山「英嗣(ひでつぐっ)!お前なんてことしてくれたんだっ!」
柴「うるせえよ」
山「うるせえだとっ?!(※ドアを開ける仕草)ガチャッ!誰に口聞いてんだよっ!!」
柴「おいっ、外だったんかよっ。見えちゃってドア越しに、お前が。
中にいてくれっ。せめて中にっ。」
山「あっ!ピットインのほうね」
柴「ピットインか分からね。ここはピットじゃねえからよ(ああ、分かった)」

会話をしている以上二人が向かい合っていると思わせておいてドアを開ける仕草をあとから付け足し、実はドア越しで言っていたとする「あとから何かを付け足すことで前提の意味が変わってしまう先入観を裏切るボケ」を行う
会話をする(顔を合わせている = 同じ空間にいる)のあとに、ドアを開ける(ドア越しにいる = 別の空間にいる)というそれまでの行動がおかしくなることを後から追加するボケを行い、それを観客に気付かせる説明的なツッコミを入れる

山「ひでつぐ(ええ)。お前なんてことしてくれたんだよっ!」
柴「うるせえな、お前なんで来たんだよっ」
山「電車で来たんだよっ!」
柴「手段じゃねえよっ!!
お前、電車好きだな、さっきからよ~、お前。

「なんで来た?」と言う「理由」を聞いているのに対し、「方法(乗り物)」で返答する「言葉の意味を取り違えるボケ」を行う
正しい部分(「なんで来た?」という具体性のない質問への返答)と間違っている部分(「理由」を尋ねているのに対し、返答の内容は「手段」)の両方を含んだ言葉で返答することでボケ、それを観客に気付かせる間違いを指摘したツッコミ入れる

なにしに来たんだって聞いてんだよっ?」
山「なんだお前その態度はっ?自分が何したのか分かってんのかっ?」
柴「分かってるよ」
山「万引きっていうのはな、一歩間違えれば犯罪なんだよっ」
柴「犯罪だよっ!
お前、なんで自分の中の世界ではギリギリセーフだよっ!アウトっ!」

「一歩間違えれば犯罪」という「あるあるな言葉」を、すでに犯罪を犯していることに対して使う「矛盾を作り出すボケ」を行う
真逆の意味を含む言葉をひとまとめに言って矛盾を作り出すボケを行い、それをに観客に気付かせる訂正的なツッコミを入れる

山「なんでそんなこと、なんでそんなこと高校生にもなってするんだよっ」
柴「欲しい物があったんだよっ!」
山「欲しい物があったら買えばいいだろ。
何のために毎月毎月120円のお小遣いあげてると思ってるんだよ!」
柴「少ね~んだよっ!だからですっ!きょうび、高校生が120円でマンスリーをどうやって過ごすんだよっ!」

あげていたお小遣いが月120円という「極端なことを言い出すボケ」を行う
世間的な価値と合わない違和感を作り出すボケを行い、それに対して指摘するツッコミ

山「お前、あの…あの…あったかいおしる粉とか買えんだろ」
柴「いらね~よっ、そんなの。なんだよあったかいおしる粉」
山「ああ!あったか~い」
柴「いいよっ!『か~い』って。自販に忠実だなっ!『か~い』とかいいんだよ、ニョロニョロはよ」

自販(自動販売機)の表記にある「あった~い」という「あるあるネタのボケ」を行いつつ、意味が伝われば良しとするところを発音にこだわる「くだらなさを作り出すボケ」。
あるあるネタをボケとして行い、指摘するツッコミ

山「そんなの毎日毎日楽しいだろよ」
柴「楽しかね~、別に。だいたいそのせいでな高校の友達になんて呼ばれてんのか知ってっか?」
山「なんだよ?」
柴「激安王だよっ!」
山「……王様じゃね~かよっ!」
柴「王様じゃね~よっ!!うれしくわないんだよっ!!王様で嬉しくないの、この場合はっ!」
山「王様っていうのはすごいんだよっ」
柴「すごかね~よ、この場合は」
山「だいだいそんな王様というあろうお方が、なにを…」
柴「うやまうなっ、うやまうなっ、うやまうなよっ」

ツッコミ担当の柴田さんが自らを「激安王」と言い出し「ツッコミ担当がボケる」という変則的な展開を行う。そして相手が王様ということもあってタメ口から突然「謙譲語(※偉い人に対しての言葉遣い)」に言葉を変える「納得感を出しつつ違和感を作り出すボケ」を行う
ボケ担当とツッコミ担当の役割を入れ替えてネタの流れに意外性を作り出す。話の流れ(相手は王様)に合わせて突然やり取り(言葉遣い)を変えるボケを行い、それを観客に気付かせる説明的なツッコミを入れる

山「これ、CDか?お前」
柴「そうだよ」
山「ええっ?モーニング…、モーニング…」
柴「モーニング娘だよっ」
山「なんだ、モーニング娘だか、森三中の娘さんだか知らね~けどよ」
柴「誰が欲しい、森三中の娘のCDっ!」
山「こんなの聞いてるからダメなんだよっ」
柴「流行ってるんですっ!」
山「こんなのばっか聞いてたら、お前の未来はウォウウォウ、ウォウウォウだよ」
柴「お前、むしろファンなぐらいだよっ!それだったら」
山「♪う~ち~の~息子が~、万引きし~ま~し~たっ、ピ~~~ス!(※ピースサインの動作)」
柴「お茶らけてる場合かっ!!
ピースじゃね~よっ!!俺は万引きしとんじゃい、コラーッ!!」

「モーニング娘。」と「森三中の娘」で無理やり似させた言葉で「無理矢理なダジャレを作り出すボケ」を行う。その後、知らないと言っていたのにもかかわらずモーニング娘。の曲「ラブマシーン」を突然歌って「発言内容に矛盾を作り出すボケ」を行いつつ、歌詞の内容を無理矢理息子に当てはめた「聞いたことのある言葉(歌詞)に違和感を発生させるボケ」を行う。そしてモーニング娘。の曲「ザ ピ~ス!」を使って、息子が万引きしたことに対して「ピース」と言う「聞いたことのある言葉(歌詞)に違和感を発生させるボケ」を行う
「モ○○○○娘。」と「も○○○娘」で最初と最後だけ言葉が一致しているダジャレ、知らない発言(「モーニング娘。(※省略)知らね~けどよ」)と知っている発言(モーニング娘。の歌を歌い出す)という矛盾、「日本の未来はウォウウォウ、ウォウウォウ(実際の歌詞)」と「お前の未来はウォウウォウ、ウォウウォウ(替え歌)」とする言い換えなどのボケを行い、それを観客に気付かせる指摘したツッコミを入れる

山「なんでお前はそんな子になっちまったんだよっ!
お前は昔は心の優しい子だったよっ!」
柴「そんなことね~よ」
山「牛も殺せなかったんだよっ!」
柴「牛は殺せね~よっ!!
そんなゴッドハンド持ってるかいっ!!『虫も殺せない』だよっ!」

「虫(musi)も殺せない」とするところを「牛(usi)も殺せない」という発音が似ている「言葉を言い間違うボケ」を行う
合ってる部分(u・si)と間違っている部分(mが足りない)の両方を含んだ意味になる似た発音で返答することでボケ、それを観客に気付かせる訂正的なツッコミ入れる

3. 転


山「とにかく店員さんに謝ってな」
柴「いいよっ!」
山「父さんも一緒に行ってやるからな」
柴「関係ね~よ、店員なんかよっ」
山「なんだ、いいかげんにしろっ、父さんにも我慢の限界があるぞ(あぁ?)
いくぞ。(※拳に息を吹きかける)フッフッ。いくぞ。(※拳に息を吹きかける)フッフッ、手出るぞ~!」
柴「『フッ』じゃなく『ハァ~』だろっ!だいたい。
おでんじゃねんだよ、馬鹿やろうがよ~。

拳に息を吹きかけるときに「ハァ~」とするところを、「フッフッ」と軽く息を吹きかける「あるあるな行動を間違えるボケ」を行う
合ってる部分(息を吹きかける)と間違っている部分(吹きかけ方)の両方を含んだ似た行動をボケとして行い、そこを観客に気付かせる訂正的なツッコミを入れる

帰るよっ、俺はよ!(※山崎さんの横を通って進もうとする)」
山「帰さないっ(※進もうとする柴田さんを体を張って制止する)」
柴「帰る!!どけ!!どけ、どけよ(※徐々に山崎さんの体を柴田さんが両手で支える形に)
お前、ちょっと待て。スキージャンプみたいになってるじゃね~かっ!!
なにしよるんじゃ、どっか行けっ!!(※柴田さんが山崎さんの体を押し飛ばす)」
山(※スキージャンプの着地の姿勢)
柴「着地決めんなっ!!
そんなのが見たいんじゃね~んだよ、俺はっ!!」
山「(※ゴーグルを外すしぐさ)お前、父さんを突き飛ばす…」
柴「いつゴーグルはめたんだよっ!?いつゴーグルはめたんじゃっ!!コラーッ!!

押し問答の間に少しずつスキージャンプのような姿勢になる、着地、ゴーグルを外すというスキージャンプの「あるあるな行動」をして「さりげなく何かしらの行動になっているボケ」を行う
流れの中で突然(ネタの終盤なので盛り上げるために大きな動きのある)あるあるな行動(スキージャンプで見かける動き)をボケとして行い、そこを観客に気付かせる(ネタの終盤なので激しく言い方を強めた)怒鳴りながら指摘したツッコミを入れる

いい加減にしろ、くそオヤジっ!!」
山「なんだとっ、いまなんつったっ?!」
柴「くそオヤジっつたんだよっ!!」
山「そんなこと言ってたのか、お前は………」
柴「聞いてなかったのかよっ!!距離を考えろっ!!距離をっ!!」

会話をしている以上二人が声が聞こえている範囲にいると思わせておきながら聞き直してから初めて聞いたかのような台詞を付け足し、実は聞き取れてなかったとする「あとから何かを付け足すことで前提の意味が変わってしまう先入観を裏切るボケ」を行う
一度目の発言(聞き捨てならない発言に食って掛かる = 発言内容を理解している)のあとに、二度目の発言(発言内容をやっと理解 = 一度目は聞こえていなかった)というそれまでの内容がおかしくなることを後から追加するボケを行い、それを観客に気付かせる説明的なツッコミを入れる

山「ああ、いいよ。じゃあな、今日もってお前は息子でもなければ(おおっ)、巨人の4番でもないっ!!」
柴「4番じゃねえよ!!だいたい打者じゃね~よ、俺はっ!」

「○○でもなければ○○でもない」という「あるあるな言葉」を行いつつ、突然「巨人の4番」を混ぜ込む「ギャップを作り出すボケ」。
あるあるな言葉に突然関係のない言葉を混ぜ込むギャップを作り出すボケを行い、そこに否定的なツッコミを入れる

4. 結


山「絶交だっ!!」
柴「絶交ってお友達かい!!いい加減にしろっ!」

縁を切るときに使う台詞に「状況として合っている台詞で納得感を作りつつ、使用する言葉が間違っている違和感を作り出すボケ」を行う
親子をテーマにしたコント(縁を切るなら「絶縁」がふさわしい言葉)なのにもかかわらず、友達関係に使う言葉(縁を切るときに使う「絶交」)を使うという流れの中で本来使用するであろう言葉を別の言葉に変え違和感を作り出すボケを行い、そこを観客に気づかせる説明的なツッコミを入れる

山・柴「どうも、ありがとうございましたっ!!」

最後に観客に対してコンビでお礼の挨拶。
約3分30秒でネタが終了

ネタの分析


舞台息子の家
テーマ万引きをした息子に親が説教する
フリ柴田英嗣(息子役)
ボケ山崎弘也(父親役)
ツッコミ柴田英嗣(息子役)
ネタの特徴-

あるあるなことを急にしたり、あるあるなことをうまく応用したり、流れの中に突然違うことをするボケが使われています。

ボケのひねりを重視した非常にレベルの高いネタです。
漫才の基本に忠実に従った模範的な漫才として評価できると思います。