漫才の書き起こし/パンクブーブー

漫才の大会『M-1グランプリ2009』優勝者パンクブーブーさんの2本目のネタの書き起こし。
これを読めば日本一を取った漫才の作り方がわかります。

書き起こしの読み方


  • ネタの展開が分かりやすいよう全体を「起承転結」で区切っています
  • 「■マーク」は「ネタ全体の起承転結の中」に、「もう一つの起承転結がある」ので区切っています
  • ( )内は、一方がセリフを言っている最中に、もう一方(相方)が割り込むセリフです
  • (※ )内は補足の説明です
  • ボケ担当・佐藤哲夫(弟子入り志願生役) ≫ 「佐」と表記しています
  • ツッコミ担当・黒瀬純(陶芸家の先生役) ≫ 「黒」と表記しています
  • 色: フリ ≫ 、ボケ ≫ 、ツッコミ ≫
    紛らわしくなるのでボケをさせるために行うフリ以外のフリには色を付けていません。

1. 起


■(1-1. 起)
佐「どうも(どうも)パンクブーブーです。よろしくお願いします(よろしくお願いします)。
やっぱりね、人生を楽しむのにわね(ん)、仕事以外にも何か一つ楽しみがあったほうが絶対いいんですよ」
黒「あっ!そういうことね。
■(1-2. 承)
なんかハマってるものある?
佐「ちっちゃい頃は田んぼとか沼にはハマってたね
黒「へ~」
佐「上京してからは都会の罠にハマって…
黒「何の話をしてるんですか?」
佐「消火器を買わされて…
黒「聞いてないでしょ。そんなの。
■(1-3. 転)
趣味とかは?」
佐「あっ!趣味ね。趣味は僕、陶芸なんですよ」
黒「いいんじゃない」
■(1-4. 結)
佐「ちょっと本気でやりたいから(ほぉ)、陶芸家の先生に弟子入りしようかと思って」
黒「いや、そんな簡単に言うけど。なかなか弟子とってくんない。
よっぽど真剣に頼み込まないと。お前」


「1. 起」の解説
  1. 舞台に登場してコンビ名を言うと共に、挨拶をしています。次に、ネタのテーマである「陶芸家への弟子入り志願(※1-4)」を行うための前置きとして趣味の話(持論)を「遠まわし」に持ち出しています。
  2. 1-1であえて「趣味」という言葉を持ち出さず、次の1-2で「ハマる」という質問をすることでボケにつなげています。このボケを「つかみ」とし、「ハマる」という言葉のフリに対して「沼にハマる」「罠にハマる」など「勘違い(※ハマる違い)」で「かぶせ(※一つのボケを変化させながらボケる方法)」を使ってボケています。
  3. ここでようやく「趣味」という具体的な言葉を持ち出し、話を本題に近付けています。
  4. 1を完成させるため、ネタのテーマ「陶芸家の先生に弟子入り」を持ち出しています。そして「真剣に頼み込まないと」というフリを入れます。これ以降は「真剣ではない頼み方」という裏切りでボケを構成してます。つまり、この1-4のフリを行うことで、「ネタ中(※「1. 起」以降の「2. 承」「3. 転」「4. 結」)に対して一貫したフリ」を作り出しています。

2. 承


■(2-1. 起)
佐「陶芸家の黒瀬純先生ですよね?」
黒「誰だ、君は?」
佐「佐藤哲夫と言います。お願いします。僕を弟子にしてください」
黒「すまないね。私は弟子をとらない主義だ」
佐「こんなに頼んでもダメですか?
黒「そんなに頼んでないだろっ!まだ一回しか言ってない
佐「お願いします。僕なんでもやりますから。
炊事、洗濯、スノボ。掃除、肩揉み、スキューバ。何でもやりますから
黒「レジャーが混ざってるっ!!楽しいのが二個ほど入ってるだろっ!!それ
佐「僕は本気なんです。僕の目を見てください(※目は真剣、口が半開き)
黒「口閉じろっ!!口っ!!目はともかく口がだらしないんだよ!お前は。
■(2-2. 承)
ほかにも陶芸家いるだろ。ほか行け、ほか」
佐「僕は先生の作品にほれたんです」
黒「えっ?」
佐「先生の作品が…マジ ツボなんです
黒「ややこしいな。皿だか壺だかわかんなくなっちゃう
佐「先生の作品を初めて見たときに思ったんです。これだ!これなら僕にも作れそうだ!
黒「何じゃその理由は。
おい、バカにしてるのか?
佐「そのことは謝ります
黒「いや、してんのかよっ!してちゃだめだろ。お前。
話になんない。帰れっ!」
佐「いやです。
僕は先生がうわ…うわ…うわかったよ。ううう、弟子にするよ…、と言うまで帰りません
黒「そんな言い方しないわっ!
帰れっ」
佐「嫌です」
黒「帰れったら帰れっ!」
佐「僕は誰の言いなりにもならないっ
黒「じゃあ、弟子に向いてない。そんなかたくなな性格
佐「お願いします。弟子にしてください」
黒「ダメなもんはダメだっ!」
佐「お願いします」
黒「おんなじことを言わせんなっ!
佐「えっ?
黒「おんなじことを言わせんなっ!
佐「えっ?
黒「おんなじ…、言わせんなってっ!お前。えっ?って聞くんじゃないよっ!!ゆっちゃうから!
とにかく弟子はとらない」
佐「本当にとらないんですか?」
黒「ああ、とらないね」
佐「本当はとれないんじゃないですか?
黒「なんだとっ?よ~し、じゃあ弟子をとってやろうじゃないか、とはならない。
ならないの巻き

■(2-3. 転)
佐「何で弟子をとらないんですか?」
黒「いいかい、最近の若いモンは我慢というものを知らない。
だからダメなんだ」
佐「僕はそんなことありませんよ」
黒「えっ?」
佐「ためしに僕にバカって言ってみて下さい」
黒「バカッ!」
佐「う……くそっ………バカ………うぅうぅうぅうぅ…。どうですか?
黒「スレスレじゃないかよっ!!お前
■(2-4. 結)
佐「これで弟子にしてもらえますか?
黒「するわけねえっつうだろっ!!


「2. 承」の解説
  1. ここからコントに入ります。弟子入りを頼み込みますが断られます。話の導入部分になっています。
  2. さらに話を進展させます。熱心に弟子入りを頼み込みますが断られます。
  3. 拒否した理由を明かします。それまでの展開(単に拒否していただけ)が一転、拒否した理由を明かしています。
  4. オチをつけています。
    2-1~2-3へと話が進むにつれ、弟子入り志願者に対して先生の拒否する態度が強くなります。「承」の部分だけでも起承転結がしっかりしていてストーリー性があります。

3. 転


■(3-1. 起)
佐「もぉっ!なんでわかってくれないんですかっ!
このわからずやっ!!」
黒「なんだとっ!お前、もういっぺん言ってみろっ!!
佐「おおっ、言ってやるっ!
このクソゲス野郎っ!
黒「変わったな。酷くなって返ってきたな
■(3-2. 承)
佐「どうしても弟子にしてくれないのなら、ビルの屋上から舞い降りてやるっ!
黒「フワって降りてきそう。なんか無事で済みそう
佐「本当に飛び降りますよ」
黒「できもしないこというんじゃないよっ!」
佐「これが冗談を言っている人間の目ですかっ(※口が半開き)
黒「口、閉じろっつうんだよっ!!
■(3-3. 転)
つ~か、お前から真剣みが伝わってこないんだよ
佐「……なに言うてるんですかっ!
黒「そういうとこだよっ!!
■(3-4. 結)
こういうのは手をついて頼み込むもんだろっ!!
佐「(※壁に手をつく動作)お願いします。僕を…
黒「壁にじゃないよっ!!ゆ・か・にっ!!


「3. 転」の解説
  1. 「2. 承」から一転、弟子入りの頼み方が乱暴になっています。「承」の展開と雰囲気を変え、ストーリーの盛り上がりを作っています。
  2. 「天丼(※観客が忘れた頃に以前見せた同じボケをする)」として二度目の「口が半開き(※2-1)」を使っています。
  3. 3-1と3-2では弟子が攻め立てる展開をしていたのに対し、3-3と3-4では先生が攻め立てる展開へと変わり、立場が逆転しています。
  4. 「手をついて頼み込むもんだろ」に対し、「壁に手をついて頼み込む」という「動きを使ったボケ(※視覚的なボケ)」で大きな裏切りを出し、ネタの面白さが最高潮に達しています。

4. 結


■(4-1. 起)
佐「お願いします。ここがうちから一番近いんですっ!
■(4-2. 承)
黒「結局、距離じゃねえかっ!
■(4-3. 転)
いいかげんにしろ、バカっ!!」
■(4-4. 結)
佐・黒「(※二人で)どうもありがとうございましたっ!」


「結」の解説
  1. 弟子入りを志願した理由が「1. 起」では「本気でやりたいから」、「2. 承」では「先生の作品にほれたんです」と言っていたのにも関わらず、「4. 結」では「家からの距離が近いから」という最後で流れを変えるいい加減な理由を「オチ」として使っています。
  2. 4-1に対するツッコミ
  3. 「いいかげんにしろ」は、漫才を終えるときの特有のセリフです。
  4. コンビでお礼を言ってネタを終えています。

M-1 グランプリ 2009 完全版 100点満点と連覇を超えた9年目の栄光 [DVD]
よしもとアール・アンド・シー (2010-03-31)
売り上げランキング: 71,658

まとめ


舞台陶芸家の家
テーマ陶芸家への弟子入り志願
フリ黒瀬純(陶芸家)
ボケ佐藤哲夫(弟子入り志願者)
ツッコミ黒瀬純(陶芸家)
ネタの特徴-


パンクブーブーさんのネタは非常に細かく計算してネタが作られています。
特に「矛盾したことを言う(する)ボケ(※発言や行動のつじつまが合わない)」を使っています。
また、ネタの流れが徐々に盛り上がるよう起承転結を考慮しつつ、全体の話のつじつまも意識したセリフが組み込まれていてストーリー的にも面白くなっています。


漫才の大会『M-1グランプリ』では決勝の持ち時間が4分(240秒)に対し、この「陶芸家への弟子入りを志願するネタ」は起30秒・承165秒・転40秒・結5秒で構成されていました。
※秒数には少し誤差があります。

お笑いの大会で優勝するほどの実力があるパンクブーブーさんですが、実はネタの構造にある問題をかかえています。
それはネタに特徴(個性)がありません。
面白いネタですが、テレビで人気が出るように作られていません。

それがパンクブーブーさんにとって今後の課題になってくるでしょう。

ちなみに、アンタッチャブルさんのネタと似ていると言われることがあります。
検索サイト「Google」で「パンクブーブー アンタッチャブル」と入力すると、「似てる」と表示されます。
パンクブーブーさんもアンタッチャブルさんのネタもひねりが効いてうまく作られいますが特徴が無いので、特徴が無いことが逆に特徴になっているため世間から似ていると思われるのでしょう。

ただし彼らもお笑いのプロ。パンクブーブーが見事な進化を遂げた。

話の言い終わりにそれまでの流れを覆す、というネタの個性を打ち出しました。
この個性が原動力となり、漫才の大会『THE MANZAI2011』で見事優勝。

『M-1』優勝に続き『THE MANZAI』で優勝という大偉業を成し遂げました。

スポンサーリンク

スポンサーリンク