笑いを取るなら極めておきたいお笑いの技術

ネタを作るときに面白さを出しやすい作り方があります。
それにはフリやボケ、ツッコミのそれぞれの仕組みや関係性を把握しておくことが必要になります。
ネタの細部の作り方を知ることで、よりネタのクオリティーが上がります。

1. 台詞・動作


笑いを作り出すフリ・ボケ・ツッコミとは関係のない、独り言や会話などストーリーを進めるために必要な発言や動き。
※何気ない台詞や動作がその後の笑いにつなげることもあります。
※笑わす意図のない台詞や動作でも観客が笑うことがあります(※例えば、談笑するシーンに釣られて笑うなど)。
  • 独り言(心境や状況の説明を声に出して言う)
  • 独白(他人には聞こえない設定での発言※心情や状況を観客向けて説明する台詞)
  • 会話(登場人物が二人以上で掛け合う台詞)
  • 疑似会話(他にも誰かがその場もしくは連絡手段によって遠方に存在するという設定で話す)
  • ナレーション(登場人物として、もしくはナレーターとしてスピーカーを使って説明)

2. フリ


(相方に何かをさせるため、)次の展開の前置きとなる台詞や動作など。提言・催促・設問など。基本的にはボケるための前置きとなる台詞や動作。
※フリを入れなくてもボケることはできるので、ボケるためには必ずフリが必要というわけではありません。
※ボケるためのフリは他人にではなく自分で入れてこともできます。
※ピン芸では台詞や動作以外に、物を使ってフリを入れることができます、

フリの分類
  • 次の展開に移すためのフリ(次の展開につなげるための前置き。例: 「続けて参りましょう」)
  • ボケに掛からないフリ(次のボケを引き出すが、ボケを作る前置きにはならない。例: 「お前がやれよ!(※次にボケるが、フリの台詞自体は活かさない)」)
  • ボケに掛かるフリ(次のボケを引き出しつつ、ボケを作る前置きになる。例: 「ここは握って行けよ!(※次に「握る」という言葉の意味を捉え違えてボケる)」)

フリとボケとの関連性を分類すると「完全一致」「部分一致」「不一致」があります。

完全一致
フリとボケを完全に同じにします。

その1。
フリの要求に対して相方が要求通りに答える発言や行動をする。
笑い(ボケ)を起こすためではなく、あくまで何かをさせるためのフリです。
上記の「1. 台詞・動作」の項目で説明した笑いを誘うボケやツッコミとは関係のない台詞や動作です。

その2。
フリの発言や行動を真似る。
オウム返し的にフリの発言や行動をマネて、ボケにします。
※相手の言ったことを疑問形で聞き返す通常の会話の場合もあります。

部分一致
フリに対してボケの発言や行動が言葉の一端として合ってはいるけど、相方の求める要求の答えとしては間違っているようにします。

漫才師・パンクブーブーさんのネタで例を挙げます。
フリ ≫ 橙
ボケ ≫ 紫
ツッコミ ≫ 赤

こういうのは手をついて頼み込むもんだろっ!
(※壁に手をつく仕草)お願いします、僕を…
壁にじゃないよっ、床にっ!!


「手をついて頼み込む」という言葉には「真剣に頼み込む」という意味が含まれており、また一般的には「土下座をしろ」という要求になります。
それを「手を付く位置を壁にして頼み込む」ことで、「いい加減な態度で頼み込む」というようになっています。
このように要求(フリ)に対して意味を取り違えることで面白みを発生させます。
ちなみに、NON STYLEさんがこのやり方のボケを得意としているので確認してみてください。

不一致
フリに対してまったく違うことをします。
「スカシ(発言を無視される)」を受けるためのフリ。

その他
その0。
  • 「フリ直し」 ≫ ツッコミ担当がフリを入れ、同じ展開をボケ担当にやり直させる。
    例: ツ「やり直せっ!」
  • 「フリ返し」 ≫ ボケ担当がフリを入れ、そのフリをツッコミ担当がフリ返し(返答し)、その返したフリでボケ担当がボケる。
    例: ボ「お前のほうがカッコイイ」 ≫ ツ「いや、お前こそ」 ≫ ボ「確かに俺はカッコイイ!!」
  • 「フリツッコミ」 ≫ ボケ担当のボケに対してツッコミ担当がツッコミを入れ、そのツッコミのセリフをフリとしてボケ担当がボケる。
    例: ボ「俺の頭、スカスカのスポンジって思われるだろっ!」 ≫ ツ「知識という水を吸いそうだなっ!」 ≫ ボ「俺の頭は水を吸うのかっ?!」
  • 「三段オチ型返し」 ≫ ツッコミ担当がフリを入れ、そのフリをボケ担当が普通の返答を2回繰り返した後、三つ目のフリの後にボケる。
    例: ツ「ものまねしろよっ」 ≫ ボ「いやです」 ≫ ツ「ものまねしろって」 ≫ ボ「いやです」 ≫ ツ「頼むからものまねしてっ」 ≫ ボ「(※誰かのものまねをしながら)いやです」

その1。
「複数のボケ」に掛けるためのフリをネタの最初に入れる。
例えば、ネタの最初に「絶対に○○しません」と言ってネタを始めたとして、途中で行う行動のすべてが「しません」と言ったのにも関わらず「○○してしまう」といった感じで、ネタ中の複数のボケに最初のフリが掛かっている。

その2。
「あとあとの(オチの)ボケ」をさせるためのフリを入れる場合に、ネタの最初や途中で明示もしくは暗示した発言・行動をする(※「明示」はフリを入れた時点で明らかにフリと分かるもの。「暗示」は(オチの)ボケを見てから結果的にフリと分かるもの)。
例えば、ネタの途中で「○○」と言っておいたとして、途中でその○○が原因で問題が発生するボケといった感じで、思い返せば「○○」がフリ(伏線)になっている。

その3。
「オチのボケ」をさせるためのフリを入れる場合に、ネタの最初に提示したテーマを再度投げかける。
例えば、「理想のバイト探し」というテーマでネタを始めたとすれば、最後のフリとして「じゃあ、お前の理想のバイトってなんだよ?」といった感じで、オチのボケへのフリを入れます。

3. ボケ


面白さを含んだ台詞や行動、展開。
言葉(+音)、動作(+体勢)、表情、衣装などで面白さを出します。
複数(コンビやグループ)で一緒にボケることもあります。

4. ツッコミ


ツッコミとはボケに対して言葉や動き、表情などで反応します。
おかしなこと(ボケ)に対して「おかしい」ということをアピールするのがツッコミです。
そのアピールに観客が共感することで笑いが起こります。
また、やり取り中にボケが隠されていることに気づかせる役割も持っています。

5. オチ


ネタの最後のボケ。

テクニック


基礎編
  • フリ ≫ ボケ ≫ ツッコミ
  • フリ ≫ ボケ
  • ボケ ≫ ツッコミ
  • フリに近いボケ ≫ ボケに近いツッコミ
  • ユニゾンボケ(コンビで同時にボケる)
  • ユニゾンツッコミ(コンビで同時に何かの対象にツッコミを入れる)
  • かぶせ(最初のボケAに変化をつけたボケBをする)
  • 天丼(最初にボケAをして、もう一度まったく同じものをボケBでする)
  • 伏線(最初のAが原因で引き起こされるボケBをする

変化編
ネタをしているときに、観客はボケ担当の役割とツッコミ担当の役割に対して先入観(思い込み)を持ち始めます。
それを逆手にとって、ネタの中盤以降でネタ中にツッコミ担当がボケたり、ボケ担当がツッコミを入れたりして役割の先入観を裏切ることで笑いを誘います。
※一回だけぐらいにする。やりすぎると他人のネタに似る可能性あり。
  • ボケ担当のツッコミ(ボケ担当がツッコミ担当に対してツッコミを入れる)
  • ツッコミ担当のボケ(ツッコミ担当がボケる)
  • のりツッコミ(ボケ担当のボケにツッコミ担当が合わせたあとツッコミを入れる)
  • ツッコミ間違い(ツッコミ担当が間違ったツッコミを行ったあと、それに対してツッコミを入れる)

フリ担当のコツ


フリを入れてからボケるネタをする場合、ツッコミ担当かボケ担当のどちらがフリを入れる役をするのかでネタのやり方が変わります(※フリのみ担当をするやり方もあります)。

例えば、ツッコミ担当がフリを入れるのであれば「話しながらフリを入れる(※ツッコミ担当) ≫ ボケる(※ボケ担当) ≫ ツッコミを入れる(※ツッコミ担当)」という会話の流れになります。
ツッコミ担当がフリを入れて、そのフリの言葉を応用してボケ担当がボケる流れになります。

ツッコミ担当がフリ: NON STYLE

井上「バイクの音で威嚇すんねん
石田「カッチ、カッチ、カッチ、カッチ
井上「ウィンカー音、ちゃうわっ!聞こえへんやろっ!

フリの「音で威嚇する」という言葉に対して、確かに「音は出している」けど「地味な音」という風に「半分は合っているけど半分は間違っている」というようなボケをしています。

一方、ボケ担当がフリを入れるのであれば「ボケの前提となる話をしておいてからボケる(※ボケ担当) ≫ ツッコミを入れる(※ツッコミ担当)」という会話の流れになります。
ネタのストーリーをあるあるな内容にして、ボケるときにそのあるあるなストーリーをうまくひねってボケます。
自分で前もってフリを入れておいてボケるか、もしくは話しながらいきなりボケる流れになります。

ボケ担当がフリ: ナイツ

塙「名言がありましたよね?
田村で金(カネ)、谷でも金(カネ)
土屋「金(きん)だよ、お前。どんだけがめついんだよっ!

「田村で金(きん)、谷でも金(きん)」という柔道の田村亮子選手の名台詞をひねっています。

理想とするネタの展開法


ネタの中に「同一性」もしくは「合理的な構造性」を使ったボケの割合を多くしたほうが観客に対して意味が伝わりやすくなります。
ただし「同一性」と「合理的な構造性」を使ったボケ方だけでネタを構成していては単純で、単調なネタの展開になってしまいます。
そこで、ネタの最初のほうは「同一性」や「合理的な構造」で意味が伝わりやすい笑いの取り方をして、中盤以降は「相違性」「意外性」「非合理性の構造性」などを混ぜ込んで違和感を強めて「笑いの質」を変えていくのが理想的な展開になります。

話すときのコツ


観客が笑い終えるのを待つ
練習でネタをしているときと観客前でネタをした時との大きな違いは、観客の笑い声があるかどうかです。
観客前でボケてツッコミをいれた時は観客が笑うので、練習のタイミングでネタを続けると話し声が観客の笑い声で消されてしまい何を言ったのかが伝わらなくなります。
なので、観客の笑い声で話し声が消えないタイミングを見計らってからネタを続けるようにします。
ただしネタの中盤から終盤にかけて畳みかけてボケとツッコミをするときは、わざわざ笑い声が終わるまで待っていてはネタになりません。
このあたりは実際のネタをテレビや動画サイトでどのようにタイミングをとっているか確認してみたほうがいいでしょう。

掛け合いのかぶせ
コンビやグル―プ(ピン芸ではスピーカーから発する声)など二人以上で掛け合っている(会話している)ときに、一方が話している最中にもう一方が割り込んで話すことで臨場感を出すことができます。
台本を作るときに、人物Aが話し、人物Bが話し、人物Aが話し、人物Bが話し…と交代で会話をするようにネタを作っていると、実際にやり取りするときに硬い印象を受けることがあります。
そこでAが話している最中にBが話し始めて会話をかぶせることでリアルな会話を演出することができます。
例: A「目玉焼きにかけるものって言ったら?」B『ソースでしょう』A「ソースは濃くない?醤油でしょ」B『いや、これが合うんだって』

例: A「目玉焼きにかけるものって言ったら?」B『ソースでしょう』A「ソースは B『いやこれが合うんだって』濃くない?醤油『絶対にソースが合うんだって』でしょ」
※文章の例だと割り込んでいるようになっていますが、実際は一方が話しているときにもう一方が「同時」に話します。

見せかけ
漫才中やピン芸中にアドリブをしているように見せかけたり、(相方への反応で)本気で笑っているように見せかけます。
アドリブをしているように見せかけると、観客に対して芸人が「ネタ」とは違う「リアルな反応」を見せることで緊張を緩和して笑いを誘いやすくできます。
また、本気で笑っているように見せかけるのは、芸人が笑うことによって観客が釣られて笑うよう「笑いを誘う」方法になります。

キャラクターを使うネタ


立場
コントをするとき(または、漫才中に行うコントをするとき)に、ストーリーの序盤と終盤で人間関係に変化を付けると劇的な展開になります。
縦の関係: 「先生と生徒」「上司と部下」「先輩と後輩」「客と店員」「師匠と弟子」「司会者と解答者」「親と子」「兄弟(姉妹)」など
横の関係: 「同級生」「同僚」「友達」「恋人」「夫婦」など
対照的な関係: 「善人と悪人」「味方と敵」「優勢と劣勢」「好きと嫌い」など

例えば、ストーリーの序盤では上司と部下は「二人の仲が悪い」という展開にします。
そして物語の終盤(起承転結の転の部分)で、「(反発しているように見えて)二人の仲が良くなる」という展開を迎えさせるようすることで、ドラマチックになります。
また、これらの人間関係の立場を逆転させて笑いを誘うこともできます。
例えば、「上司と部下」という設定の場合、本来は上司が部下を従えますが、逆に部下が上司に対して命令するなど、「立場を逆転させる」ことでボケを作り出すことができます。

先入観
キャラクターのイメージに変化を付け、特に真逆の変化を付けると先入観を裏切られたことから笑いをとります。
例えば、「子供」を演じていた場合、急に大人っぽいことを言う。マジメな人物を演じていたら、急に変態的なことを言うなど、「キャラクターの設定の先入観(印象)とは違う違和感を感じさせること(間逆なこと)を突然させる」ことでボケを作り出すことができます。

※上記「立場」「先入観」など、いずれのボケ方も「一定の流れを作っておいて、突然裏切る展開を起こす」ことで笑いを誘うテクニックになります。

「緊張と緩和」を使うネタ


お笑い界ではネタ作りに「緊張と緩和」という手法が使われます。
緊張する状況と緩和(緊張が解ける)する状況を切り替えることで笑いを誘う方法です。
  • 特別な環境にいる
  • 特別な行動をする
  • 相手を特別な存在と考える
  • 成功させたい(失敗したくない)
  • 恐さ・怖さを感じる
  • 問題が発生

上記のようなことをネタのテーマにすると、「緊張した状態」を作り出すことができます。その状況から脱することで「緩和」という状況になります。
例えば、「相手を特別な存在と考える」を使った場合は、「デート」や「告白」などをテーマにすると、緊張感がある状況を再現できます。
流れ的には「緊張 ≫ 緩和」というほうが笑いを誘いやすいですが、逆に「緩和 ≫ 緊張」という流れでも笑いを誘うことができます。
要は、「ギャップ」を生み出すことで笑いにつながるので、「対照的な状況」「対照的な反応」を作り出す方法として「緊張と緩和」という手法が用いられます。

奇抜な設定を使うネタ


基本的にネタのストーリーは2通りあります。
「日常的・現実的な設定」と「非日常的・非現実的な設定」です。
「日常的・現実的な設定」をネタにした場合は、例えば何かの職業を演じたり何かのシチュエーションを演じると、セリフや行動に対して観客に先入観が生まれやすくなります。
その先入観を裏切ってボケたりします。
一方、インパクトのあるネタやボケを行いたい人には、「非日常的・非現実的な設定」をおすすめします。
例えば、笑い飯さんの場合は頭が鳥で体が人間でできている「鳥人ネタ」、モンスターエンジンさんの場合は神様を演じた「暇を持て余した神々の遊びネタ」、あとフリップネタですがバカリズムさんの「都道府県の持ち方」など、現実的ではない展開から観客に与える意外性が大きくなります。
ただし、「非日常的・非現実的な設定」というのは観客から理解されにくいので、できるだけ「同一性」や「合理的な構造性」を持たせるようにしましょう。
「鳥人」は頭が鳥で体が人間で作られている「ならでは(合理的に感じる発言)」のボケ方、「暇を持て余した神々」は一連のやり取りの最後に「結局は神様が現れる(同一性の発生)」、「都道府県の持ち方」は「都道府県の形状上、持つとしたら確かにそうなるよね!(※合理的な絵)」というように観客に納得させています。

まだまだお笑いのテクニックはあると思いますが、とりあえずここまで。