ネタの作成手順付き!お笑い台本の作り方

お笑いネタの台本を作る作業を説明します。
芸人は、短期間で新ネタを要求されることもあるので作業時間の短縮が必要です。
これさえ覚えておけば、迷うことなくネタを作る工程がわかります。

台本を作る前の準備


まず、台本を作り始める前に、ネタを披露する環境を確認しておきましょう。
事前確認をせずにネタを作ると、観客の好みに合わなければ反応が悪く、会場の構造・設備に合わなければ一から作り直しという事態が起こります。

そのような問題を起こさないようにするためにも、会場の関係者に確認したり、実際に会場へ行き、自分の目や耳で環境を確認しましょう。また、インターネットが使えるのであれば、環境に関する情報を前もって調べておくといいでしょう。

確認する内容
ネタを披露する場所に関して、確認する必要がある項目。
  • 客層(どのような年齢・性別・職業・地域の観客が見るのか?)
  • 会場(舞台はネタをするのに必要な広さはあるのか?観客席の奥にいる人まで聞こえるのか?見えるのか?)
  • 隠す(幕やパーティションなど、舞台の横で人が隠れられるものがあるのか?)
  • 道具(会場で道具を借りられるのか?道具は自分で持ち込む必要があるのか?)
  • 音響(音響機器を使った演出はできるのか?音の聞こえ具合は良いのか?)
  • 照明(照明機器を使った演出はできるのか?照明の当たり具合は良いのか?)
  • 時間(ネタを披露する時間はどのくらいあるのか?ネタは何個やらなければならないのか?)
  • 条件(やってはいけないことはあるのか?やらなければならないことはあるのか?)

求められるネタの傾向
ネタを披露する場所により、ネタを披露する時間や客層などの影響で求められるネタの傾向。
  • テレビ番組(ひと組の芸人を4分以上放送することは滅多にないため、時間は4分以下。個性的なネタや芸人が好まれるため、特徴のあるネタや芸風が必要。バラエティ番組の視聴者は圧倒的に10代~20代が多いため、若者がターゲットのネタが必要。)
  • 舞台(お金を払って見に来ている観客を満足させるには、長い時間のネタをする必要があるため、場合によって時間は4分以上。長い時間のネタは途中で飽きてくるため、メリハリのある起承転結が効いたネタが必要。単独公演・合同公演など客層はその時々で変わるため、若者・自身のファン・不特定多数の人などがターゲットのネタが必要。)
  • 営業(会場の構造や設備の影響を受けるため、環境に左右されないネタが必要。客層を選ばず依頼があった場所へ営業に行くため、不特定多数の人がターゲットのネタが必要。)
  • ネタ動画(スマートフォンでは手軽に見られる短い動画が好まれるため、時間は3分以下。短い時間の動画で話題になるには、発想力や技術力があるネタが必要。お笑いネタの動画の視聴者層は圧倒的に10代~20代が多いため、若者がターゲットのネタが必要。)

台本の作り方 - ストーリー編


1. 舞台とテーマを考える
はじめに、「舞台」と「テーマ」を決めましょう。

舞台は、どのような場所なのか?を設定します。例えば、「学校」「会社」「道端」などです。
テーマは、どのような出来事が起こるのか?を設定します。例えば、「先生が生徒に勉強を教える」「部下が上司にパソコンの使い方を教える」「主婦が悪者から被害に遭う」などです。

※ネタは、芸人と観客が同じ空間で行うネタと、芸人が舞台上で劇を演じて別の世界を作り出すことによって舞台上の空間と観客のいる空間を分けるネタ(主にコント)の2通りあります。
※しゃべくり漫才(※ネタの途中でコントを行わない漫才)や、コント以外のピン芸をするときに「舞台」や「テーマ」を設定しないこともあります。ただし「話の内容」として必要であれば設定しましょう。例えば、「学校」に関する話でしゃべくり漫才を行う場合です。
  • テーマ(観客に対して話すネタ。例: しゃべくり漫才, 漫談など)
  • ストーリー(観客の前で演じるネタ。例: コントなど)
  • お題(題目に沿って複数のボケを連続して見せるショートネタ。例: フリップ芸など)
  • 演目(観客の前でパフォーマンスをするネタ。例: ダンス)

「場所」としては、現実的な場所から非現実的な場所まで、様々な段階があります。
  • 行ける場所(身近な場所。例: 本屋)
  • 行けそうにもない場所(実在しているが一般的には無縁。例: 首相官邸)
  • 絶対に行けない場所(実在しているが行くことができない。例: 月)
  • 空想上の場所(実在していない。例: カキクケ国)

「テーマ」も同様です。
  • やれること(誰でもできる。例: 書店員から本を買う)
  • やられていること(一部の人のみできる。例: 首相と会話する)
  • やれないこと(誰もできていない。例: 宇宙移住業者と契約)
  • 創造上の行為(誰もできない。例: カキクケ語を話す)

「舞台」「テーマ」が決まったら、「そういうことあるある!」「確かにそうだな!」など、共感や納得感を作り出すことがネタ作りの最大のポイントです。
例: 「コンビニ」で「買い物をする」に設定

2. 役割を考える
「役柄」と「担当」を決めます。

役柄は、(1)で決めた舞台に合った「人物像(性格・職業など)」です。
担当は、ネタをするうえでの役割(フリ担当・ボケ担当・ツッコミ担当)です。
※ピン芸では、一人で複数の役や担当をすることもあります。また、道具に役割を与える場合もあります。
※しゃべくり漫才やピン芸では「役柄」を設定せずにネタをする場合もあります(※ただし、しゃべり方に特徴を付けてキャラを作ることはあります)。

例: 「お客役(フリ&ツッコミ担当)」と「店員役(ボケ担当)」に設定

3-1. あるあるな言葉を考える
設定した「舞台(1)」の状況で、「よくある言葉」を考えます。
「舞台」というより「テーマ」に関する「やり取り」で考えたほうが思いつきやすいでしょう。
「確かにそういうこと言うよな~」という日常で聞く個性的な言葉をたくさん思い出しましょう。個性的な言葉ほどあるある度が増し、面白さが出ます。
  • 先生の基本(「出欠を取ります!」)
  • あるある度・小(「2月4日だから出席番号24番、読んで!」)
  • あるある度・大(「『はい。』は一回でよろしい!」)
  • ありそう(「『テスト、始め!』………って言ったら始めてください」)
  • ないない(「このクラスの中でチョークのことを『白い恋人』と言ってかじった人がいます。正直に手をあげなさい!」)

3‐2. あるあるな行動を考える
設定した「舞台(1)」で「よくある行動(状態・状況)」を考えます。
確かにそういうことあるよな~、という日常に起こる個性的な行動をたくさん思い出しましょう。
個性的な行動ほどあるある度が増し、面白さが出ます。
  • 本屋の基本(立ち読みをする)
  • あるある度・小(袋とじを隙間からのぞこうとする)
  • あるある度・大(座り読みをする)
  • ありそう(売られている本なのにページをめくりやすいよう指を舐める)
  • ないない(自宅にいるかのように寝ながら本を読む)

3‐3. あるあるな展開を考える
設定した「舞台(1)」で「よくある展開」を考えます。
確かにそういうことあるよな~、という日常に起こる個性的な出来事をたくさん思い出しましょう。
  • 本屋の基本(本を手に取る)
  • あるある度・小(トイレに行きたくなる)
  • あるある度・大(読みたい本が隣の人の前にあって取れない)
  • ありそう(隣り合った男女が同じ本を取ろうとする)
  • ないない(「あちらのお客様からです」と言ってHな本を渡してくる)

3‐4. 似た出来事のあるあるを考える
設定した「舞台(1)」で「3. あるある」を考えるときに、「似た出来事のあるある」も使えます。
例えば、「『コンビニ』で『買い物をする』」という設定をしていても、「『○○※コンビニ以外のお店』で『買い物をする』」という考え方をします。
似たテーマであれば応用が利くので、ボケを考える範囲が広がります。

「3」の作業で「あるある」をできるだけ(個性的なものを)たくさん書き出します。
発言や行動をとる際に、良くも悪くも感情の揺れ動きが大きいほどあるある度が高まります。
この「あるある」を使ってストーリーを作りつつ、「あるあるネタ」で笑いを誘ったり、あるあるな流れから観客に先入観を作り出して裏切るボケを作るようにします。
コントやピン芸ではあるあるな物を製作し、小道具として使うこともできます。

台本の作り方 - 構造編


1. ボケ方・ツッコミ方を考える
ボケ担当の「ボケ方」、ツッコミ担当の「ツッコミ方」を考えます(※必要であれば、フリ担当の「フリ方」も考えます)。
「キャラクター」として作っても良いでしょう。
例: ボケ担当が店員役で「おかしな発言をしたり行動をする」
例: 「3段オチ」「天丼」「のりツッコミ」など、笑いを誘うテクニックを用意

2. ネタの骨組みを考える
ボケ担当とツッコミ担当との「やりとりの仕方」を決めます。

人気が出るお笑い芸人になるためには、「骨組み」が必要になります。
特徴(個性)のないネタは観客が覚えにくいうえ地味になるので、必ず「骨組み」を入れるようにしましょう。

※骨組みを考えるうえで重要なのはテクニックです。
ネタ中のボケ方やツッコミ方に色々なテクニックを使う、もしくは特定のテクニックだけにしぼって使うのかを選びましょう。
例えば、サンドウィッチマンさんの漫才のようにひねりの利いたボケやツッコミを使う「いろいろなテクニックを使う」、もしくはアンジャッシュさんのコントのようにまったく別のシチュエーションの二つがうまくかみ合っていくような「一つの展開で通す」などのようにします。
例: ツッコミ担当がボケを指摘して、続けて面白いツッコミを入れる

台本の作り方 - 応用編


ネタの肉付けを考える
ネタを行う「持ち時間」に合わせて「起承転結」の時間配分を考えながら、ストーリー(肉付け)を作ります。
※実際にネタをする場合は観客が笑い終えるのを待つ時間も必要なため、「ネタに使える時間=ネタにかかる時間+観客が笑い終えるのに待つ時間」となります。つまり、ネタを作る際にはネタに使える時間よりも短めに作る必要があります

「骨組み」はネタの固定的な部分で、パターン化したやり取り(特徴的なフリ方・ボケ方・ツッコミ方)や、起承転結的な展開の部分です。
そこに新しいネタを作るときに、ストーリー(舞台・テーマ)を肉付けすることで完成します。
例えば、お笑いコンビ・COWCOWさんのネタ「あたりまえ体操」であれば、「♪あたりまえ~、あたりまえ~、あたりまえ体操~。○○て、○○ると、○○!あたりまえ体操~」の○○以外の部分が骨組みです。そして○○の部分が肉付けです。
新しいネタを作るときは○○の部分だけを考えるだけになっています。

ちなみに、新ネタにチャレンジするときに、骨組みを変更することもあります。
COWCOWさんは「あたりまえ体操」以外にも「アイアンメイシン」というネタにもチャレンジされています。
ネタが変われば骨組みを一から作り直す必要がありますが、同じネタばかりやっていると飽きられることを考えれば避けては通れません。
ただし起承転結的な部分はパターン化できます。例えば、起承転結の起であるあるを使って面白さを通じやすくし、承で意外性を強めてくだらなさから面白さを増し、転で雰囲気を変えてマンネリを防止し、結で締めるポーズをしてネタが終わったことを強調するなど、ある程度の規則性(ネタのスタイル)のようなものを確立すると良いでしょう。

お笑い台本の作り方

ネタの作り方は二通り


ストーリー型
舞台やテーマに沿ってストーリーを作っておき、そこにフリ、ボケ、ツッコミ、ネタの展開、ギャグなどを加えていきます。

例えば、「あるある(※特徴的な出来事)」を盛り込みながらストーリーを作ります。
「コンビニ」を舞台にネタを作る場合は、「本を立ち読みする」や「トイレを借りる」など、誰にでもよくある展開を書き出していきます。
特に個性的な出来事(あるあるネタ)を取り入れるといいでしょう。
「温かい物と冷たい物を(別々の袋に)分けてお入れいたしましょうか?」「(※列待ちしているときに)次のお客様、こちらのレジへどうぞ!」「ジュースを買おうと思ったら、バックヤードで補充作業をしている店員と目が合う」など、言葉でも行動でも設定した舞台やテーマで起こる何かしらの個性的な出来事をストーリーに取り入れていきます。

ちなみに、何かの作品(既存の物語)をネタに取り入れることでも「あるあるなストーリー」を作ることができます。手法としては、「パロディ」と呼ばれています。
すでに誰もが知っているストーリーを思い起こさせたり、ずらすことで笑いを誘えます。
注意点としては、既存の作品には「著作権」というものがあるので注意が必要です。また、「パロディとしてネタにしている」ということを観客に理解されることが大前提なので、ネタの見せ方によっては「パクリ」だと批判を受ける恐れがあります。

「ストーリー型」の欠点としては、ネタの特徴が無いので人気が出づらい傾向があります。
芸人自身に強力な個性がなければ、ネタが普通すぎるように感じます。

テクニック型
笑いを誘うための特定のフリ方・ボケ方・ツッコミ方・ネタの展開・ギャグなどを決めておき、それを基にストーリーを作っていきます。

例えば、「スカシ(※相方の言葉や行動を無視する)をメインに使ってボケる」と決め、それを軸にストーリーを作ります。
「お客役のツッコミ担当が店員役のボケ担当に話しかけても無視される」といった感じでネタを作れます。
また、無視しておいて特定のことだけ返事(反応)するようにして、「これは反応しないけど、あれは反応するんだ!」と笑いを誘います。
特定のやり取りを行うことで、観客から「あのネタをする芸人さん」というように覚えてもらいやすくなります。
その芸人にしかない個性を生み出し、その個性が大勢の人のツボにハマったときに爆発的な人気につながります。

ちなみに、特定の発言(話し方・話す内容)をすることで「キャラ」を作ることができます。手法としては、「キャラ芸人」と呼ばれています。
すでに誰もが知っている発言(言葉づかい・あるあるな台詞)を使ったり、急に素で話すことで笑いを誘えます。
注意点としては、特殊な格好(コスプレ)をするキャラで人気が出たときは、季節(気温)を問わず同じ格好をし続けるので苦労することがあります。

「テクニック型」の欠点としては、特定のやり方を繰り返すので飽きられやすい傾向があります。
うまくひねった展開にしなければ、同じ流れが続いて退屈に感じます。

笑いを取る以外の方法


コントやピン芸などをする場合は、必ずしも「笑いを取らなければならない」とは限りません。
ドラマチックな展開が繰り広げられていれば、その面白さに観客は満足します。
もちろんお笑いネタとしてやっているのであれば笑いを取ることは必要ですが、ときには感動や恐怖感を作り出すネタをするのもアリでしょう。
(※ネタを複数見せるうちの一つとして変化球的に披露すると効果的でしょう。とはいっても、やはり最後は笑いを取り、「お笑い」らしく終わると良いでしょう。)

おすすめ記事


ジャンル別 ネタの作り方
漫才・コント・ピン芸など、それぞれのネタの作り方を学びたい人向けのリンク集です。
また、漫才・コント・ピン芸などのいずれにも当てはまらないネタのやり方は、「ピン芸ネタの作り方」の記事が参考になると思います。

参考資料
プロのお笑い芸人さんが披露したネタのリンク集です。

ネタ帳の使い方


台本を作るために考えたことや思いついたことは忘れないよう、記録しておきましょう。
また、ネタを披露する環境に関する情報も記録しておくと役に立つでしょう。
  • 記入・入力(情報を紙に書いたり、パソコン・スマホ・携帯などに打ち込む)
  • 撮影(実際にネタをしているところや、ネタを披露する環境を動画や画像で撮る)
  • 録音(実際にネタをしているところや、ナレーションやBGM・効果音などの音声や音を録る)
  • 印刷(パソコンやスマホなどから情報をプリントアウトする)
  • 表示(パソコンやスマホなどから情報を表示・再生する)

ネタのスタイル
骨組み(※特徴的なフリ方・ボケ方・ツッコミ方)、起承転結(※特徴的なネタの展開・ストーリーの展開)、キャラクター性(※特徴的な言葉づかいや話す内容・外見や動きなどの人物像)など、観客・世間から覚えてもらいやすいよう、ネタや芸人自身に特徴(個性)を持たせる部分をまとめておきます。

ネタのタイトル
ネタの管理や個別に覚えやすいよう(覚えてもらいやすいよう)、名前を付けておきます。
例えば、単純に「(※仕事がうまい店員のネタには)カリスマ店員」、面白さを付け加える場合は「(※嫌味なことを言うOLのネタには)超うざすぎるOL」、ネタのスタイル自体に付ける場合は「(※拳法のような動きをする漫才のネタには)カンフー漫才」などのように付けておきます。

ネタを列挙
フリ、ボケ、ツッコミ、ギャグなど思いついたアイデアをたくさん記録しておきます。
特定のネタのために記録したり、もしくはネタの内容にさえ合えば「いずれ使う用」に記録しておきます。

ネタのテンプレート
(※デジタルツール用)ネタの台詞を何度も入力しなくて済むよう、入力済みの文章を作っておきます。
例えば、「○○したっていいじゃないか ○○したっていいじゃないか」というネタを作ったとすれば、事前に入力して保存しておき、コピー&ペーストもしくはファイルのコピーを作って使い回します(※あとは○○部分にボケを入力するだけです)。他にも、ネタを披露する時間に合わせて内容を増やしたり減らしたりする「バージョン違いのネタ」を作成するための元ネタ(「ネタの完成系」)をテンプレートとして用意しておきます。

ネタの完成形(台本)
1つのネタを作ります。
出来上がったネタをストップウオッチで計測しながら実際にやってみて、どのくらい時間がかかるのかも記録しておきます(※ネタを披露する時間に合わせて調整する際に使います)。

ネタが完成しても


まず、台本が完成したら、何度も読み直して調整します。
次は実際に練習しつつ、細かく調整します。
また、本番以降も次回のために、さらに調整します。
つまり、台本が完成したからといっても、ネタの調整は常に必要になるため作業に終わりはなく、お笑い芸人という職業はパフォーマーでもあり創作家でもあるといった職業なのかもしれません。
ちなみに、お笑い芸人さんやテレビ番組のために台本を作る「台本作家」や「放送作家」という職業があります。人前が苦手な人は舞台に立たず「作家」という道もあります。