お笑いネタで人を笑わせる仕組み論

お笑いのネタをするにおいて
観客や視聴者を笑わせるには
どうすればよいのか?について書きます。

面白さを作り出す方法


お笑いネタの面白さというのは以下の4つから構成されています。
  1. 技術(構造)
  2. 意味
  3. 個性
  4. 好意

「技術」は、3段オチ(※二回続けて同質のことを繰り返して特定の規則性を観客に刷り込み、三度目に規則からズラすことにより意外性を発生させて笑いを誘う方法)や、天丼(※一度使ったボケを観客が忘れた頃に再び使って同一性を作り出して笑いを誘う方法)など、ネタの仕掛け的な部分です。
この「仕掛け」に気づかせることで笑いが起こるので、観客が仕掛けに気付かなければ笑いは起こりません。
ちなみに、落語には「考え落ち」というのがあり、「意味」に気付かせるネタ構造(「技術」)がやや難しいので、観客が意味を理解できて笑うまでに少し間があくことで起きます。

「意味」は、「技術」が作り出した言葉や動作の内容を解釈したときに、「共感」「納得感」「幸福感」「違和感」など観客の心情を揺さぶる部分です。
ちなみに、ダジャレ(※例: 「"電話"に誰も"出んわ"」)は「技術(韻を踏んで同一性を作り出している)」はあるものの心が揺さぶられるほどの「意味」を持ってないので笑いを取るほどの面白さを含んでいません
一応、観客からは「denwa(電話)」と「denwa(出んわ」で同一性(同音異義語)を作り出しているのだろうと理解はされます。

「個性」は、「見た目(ルックスやファッション、動き)」「声質」「言葉の言い方」「ネタ」などが個性的であるほど観客を惹きつけやすくなる部分です。
例えば、以下の文章を読んでください。
もぉ~、なんやのん

では、以下の文章を「フットボールアワーの岩尾さんの声」を想像しながら読んでください。
もぉ~、なんやのん

少し違う印象になっていませんか?
フットボールアワーの岩尾さんの声は少しこもっていて、だるそうな言い方?をされています。
また、外見(顔や頭髪)のことをイジることで笑いを誘うまでに至っています。
そういった個性があるほど人に興味を持たれやすく、また、ネタ自体に面白さが加わることになります。

人間は相手のことを「好き」だと思う意識が強まると簡単に笑ってしまいます。
これは人間の本能で、好きな人とコミュニケーションをとると相手に対して仲間意識を高めるために自然発生する笑いです。
よって、好きな芸人さんを前にすると好意から笑いが起こりやすくなりますし、また、特定のネタで笑わせればそのネタのことを好きになり意識が過剰的で笑いやすくなります。

「好意」は、普段から「個性がある」「面白い」「カッコイイ」「カワイイ」という風に、観客が芸人に対して「好意」を持っていることで面白く感じやすくなる部分です。
仮に、初めて見る芸人さんと自分の好きな芸人さんがまったく同じネタをしたら、好きな芸人さんのほうが面白いと感じやすくなると思います。
コンサート会場でアイドルがベタなウケ狙いの発言をしても、会場の何万人ものファンが大ウケします。
ファミリーレストランで友達同士で集まって話したり、家族団らんで話せば自然と笑いが起こります。
「素人同士の集まり」でも「好意が笑いを生み出す」ので非常に重要な要素になります。
他人にとってはどうでも良い話でも、「共感」できる仲であれば「大きい意味」を持つので心が揺さぶられ笑いが起きやすくなるのだろうと思います。
また、ネタ自体にも「発想力の高さを感じられる」「ネタのテーマが好み」などでも好意が発生します。
芸人に目新しさやネタに斬新さがあると爆発的な「好意」が生まれ、これがブームの原動力となります。

文章で人を笑わせる難しさ


テレビ番組で芸人さんのネタを見かけますが、「M-1グランプリ」や「キングオブコント」といったお笑いの大会が映像化(DVD販売)されることがあっても書籍化されることはありません。
その年のお笑い界の最高峰のネタでも、文章(書き起こし)にすると面白さがなくなるため、書籍化されないのだと思われます。
そもそもお笑いの大会だけでなくバラエティ番組のどれをとっても映像化(DVD・動画)がメインです。

なぜお笑いネタを文章にすると面白さがなくなるのか?
その謎を解くために、ネタに影響する要素を挙げてみます。
  • 視覚的な情報(動き・表情, 外見・ファッション, 小道具・セット・照明)
  • 聴覚的な情報(声質・話し方, 効果音・BGM・物音)
  • 時間的な情報(速さ・タイミング・間, ネタ順)
  • 環境的な情報(客層, 舞台の構造・客席の構造)
  • 感覚的な情報(芸人やネタへの好意・関わる情報, 場の緊張感・高揚感、他の観客の反応)

お笑いネタを面白くさせているのは“脈絡をひねる”だけではありません。様々な情報が組み合わさることで面白さを作り上げています。
しかし、文章の段階では客観的な情報である「視覚的な情報」「聴覚的な情報」「時間的な情報」「感覚的な情報」「環境的な情報」などが加わっていないため作成した文章を読んでも、ネタを披露する際の表現力や芸人・会場から受ける心理的な影響が一切なく、面白さが生まれにくいのです。

もし自分が芸人でお笑いネタを作る必要があったり、インターネットサイトで大喜利に参加しようとした際に、文章でネタを作ることになります。
しかし、自分で作成したネタを読んでも、面白さがいま一つ分からなかったりします。
一番の原因は、ネタを作っている本人はストーリー・ボケ・ツッコミのひねりの部分を事前に知っているため、「気付く」ということができない点にあります。
お笑いネタというのは、芸人が行うネタの中に潜在している「ひねり」に観客が気づいた瞬間に脳が極度の興奮を起こすことで、面白いと感じたり笑ったりします。
しかし、内容を事前に知っているネタの作成者は「気付く」ということができないため、台本作りの際には自作の文章を淡々と読み進めるだけになります。
マジシャンが自分の「トリック」に凄いと思ったりしないのと同じで、自作の「ひねり」には反応することはありません。

では「文章という表現方法」では絶対に面白さは出せないのか?といったら、そうではありません。
芸人から発せられる強烈な個性として「聴覚的な情報(声質・話し方)」「感覚的な情報(芸人・ネタへの好意)」などがあれば、ネタが文章化された際でも、読みながら「話す際の表現力」が脳内に思い浮かんで面白さを生み出すことはあります。
もちろんこれは他人のネタだからできる話です。

最後に。
自分の面白いと思う基準が観客や世間と合う合わないという根本的な問題も、ネタ作りの難しさと言えるでしょう。
そのときは他者からの客観的なアドバイスを受けることで、自分では分からなかった問題点に気づけるはずです。

個別の仕組み


ボケる・ウケる

スベる

フリとボケとツッコミ

一発ギャグとギャグ

ボケの種類


ボケは二つに分けることができます。
  1. 意外性型のボケ
  2. 構造型のボケ

1はギャップ的なボケをしています。
2は文脈にひねりを加えるボケをしています。

ネタ(漫才・コント)で例えると、以下の芸人さんになります。
1: バッファロー吾郎・スリムクラブ
2: サンドウィッチマン・ナイツ

1は、極端な文章のボケで構成されていることが多いです。
文脈自体にひねりがないか、あったとしても簡単な構造のボケです。
文章の「意外性」だけで面白さを作り出します。

バッファロー吾郎さんのボケ方

「実は、大魔王は市毛良枝さんだったんだよっ!」

大魔王という悪の正体が、市毛良枝さん(※女優)という雰囲気が良い人物だったことにして、ギャップを作り出しています。

一方、2は文脈に不自然さを発生させるような「構造」を作るボケです。
文脈に不自然さを与えて、面白さを生み出しています。
1は独特な文章で面白さを作り出すため好みが別れやすいですが、2はうまく文章構造を作り上げるため「うまい」と言われます。
サンドウィッチマンさんのボケ方

「(※飲み物の)サイズのほうS・M・A・L・Lがございますけども?」

飲み物のサイズのS(エス)・M(エム)・L(エル)という順番を応用して、「S・M」の途中から「A・L・L」とつなげることで「SMALL(スモール)」にしています。

1は極端な文章なのでその意外性の雰囲気から面白さを作りますが、意外性というのは人によって感じ方が違うため面白さが伝わらないことが多いです。
1のようなボケ方を好む人には伝わりますが、2のような文章構造を重視している人には極端なことを言っているだけにしか思えません。

2は構造で作るため、その「構造が形としてあるボケ」のため、1のボケのような「構造の無い雰囲気のボケ」とは違って伝わりやすいです。

サンドウィッチマンさんやナイツさんの漫才ネタを見ると、ほとんどがなにかしらの文章(日常会話で使用するセリフ)をひねって作っています。
サンドウィッチマンさんは何かの職業のセリフ、ナイツさんは有名なテーマを使っていることが多いです。
この二組の漫才師は、元ネタの文章構造に違和感を作り出すことで面白さを作り出しています。

一方、バッファロー吾郎さんやスリムクラブさんのネタは、文章に突然無関係な話(or 対照的な話)が飛び込んでくるという展開をしています。
話の前後間にギャップを生じさせて雰囲気で面白さを作るので、「構造」があるといっても「文章の前後に極端な違和感があるだけ」になっています。

「お題とボケとの関係性」のところで書いた「1. お題を見ないとボケが成立しないもの」と「2. お題を見なくてもボケが成立するもの」との関係で説明します。
上記のバッファロー吾郎さんとサンドウィッチマンさんのボケ方を大喜利にしてみます。
雰囲気型
お題「大魔王ってどんな存在?」
ボケ「市毛良枝さん」

構造型
お題「店員の発言で困ったこととは?」
ボケ「(※飲み物の)サイズのほうS・M・A・L・Lがございますけども?」

雰囲気型はお題を見ずにボケだけ読むと「市毛良枝さん」という人の名前が書かれているだけなので、お題を見ずに読むと成立していないのが分かります。
一方、構造型は「(※飲み物の)サイズのほうS・M・A・L・Lがございますけども?」というように、お題を読まなくてもボケが成立しているのが分かると思います。

ちなみに、日本のお笑いとアメリカのお笑いの違いを説明します。
日本では主にボケをするときは「意外性」を作り出します。
ただしその「意外性」というのは意味が理解されにくいような発言や行動をするので面白さが伝わりにくくなります。
そこでツッコミを入れることで「ボケ=ツッコミ」の「同一性」を作り出し、面白さを伝わりやすくします。
一方、アメリカのボケ(ジョーク)は「合理的な構造」を作り出します。
日本のような意味の通らない「意外性」ではなく、意味がうまく形成されている「合理的な構造」でボケを作り出します。
だから、アメリカではツッコミを入れないのです。

とりあえずここまでのまとめ。
面白いネタを作るのなら「人が何かに気付く構造を作り出す」というわけです。